日本ドキュメンタリー史を山形映画祭機関誌『Documentary Box』ならではの視点より辿る企画。これまでインタビューに登場して下さった26人の作家たちの作品を一挙上映。このラインアップは今回限り!
松本俊夫×高嶺剛×川口肇(監督)
つぶれかかった右眼のために
1968/カラー/DVD/13分/監督:松本俊夫
サシングヮー
1973/カラー、モノクロ/16mm/13分/監督:高嶺剛
YIDFF2003 公式サイト「サシングヮー」»
異相 Ver. 7.6
2001/カラー/ビデオ/51分/監督:川口肇
YIDFF2001 公式サイト「異相」»
実験映像のパイオニア松本俊夫の『つぶれかかった…』は三面マルチスクリーンを駆使した68年カウンターカルチャーの記録。『サシングヮー』は「僕の映画の原点みたい…いとしい短篇です」という沖縄を代表する映像作家・高嶺剛による家族の記憶を巡るクロノロジー。「作者って一体何処にいるのか…」と問う川口肇は30代若手ホープ。ドキュメンタリーの形式を無限大にまで広げる作家たちの営み。
9.30(土)13:00+トーク(松本俊夫、川口肇)@アテネフランセ文化センター
時枝俊江(監督)
夜明けの国
1967/カラー/35mm/110分
「文化大革命について中国共産党が声明を出したのは8月8日です。私たちが撮影のために入国したのがちょうど8月8日でした」(時枝) 国交正常化前の中国、激しく揺れ動く文化大革命の嵐の中で半年に及ぶ、長期ロケで完成された作品。文化大革命初期の貴重な記録。
9.30(土)15:20+トーク(時枝俊江)@アテネフランセ文化センター
大津幸四郎(撮影)×田村正毅(撮影)×久保田幸雄(録音)
日本解放戦線・三里塚の夏
1968/モノクロ/16mm/108分/監督:小川紳介
小川プロの「三里塚」シリーズ第1作。この作品を契機に小川プロの“定点観測”による撮影が確立されていく。カメラは機動隊に対して武装を決断する青年行動隊を中心に闘争の内部へと入り込んでいく。小川は「全ショットを農民の列中から、その視座から撮り、権力側を撮るにも、正面から、それとの対面で、すべてを撮った」と語っている。
9.30(土)18:00 @アテネフランセ文化センター
土本典昭(監督)×大津幸四郎(撮影)
「医学としての水俣病」三部作
第一部 資料・証言編 1974/82分
第二部 病理・病像編 1974/103分
第三部 臨床・疫学編 1975/91分
カラー/16mm
「1973年3月の判決以後、それまでの勢いの退潮は予感しました。気持としては退潮期にはむしろ逃げられない」(土本) 「患者の苦しみを背中に背負った門外漢として切り込んでいくことが必要だった、徹底的に」(大津) 水俣病について当時の医学的記録、資料、実験などを交え詳細に検証していく。同時に医学の限界も露呈、水俣病が現在も続いていることが告げられる。
10.2(月)第一部 14:30+トーク(土本典昭)@アテネフランセ文化センター
10.2(月)第二部 16:40 @アテネフランセ文化センター
10.2(月)第三部 19:00+トーク(大津幸四郎)@アテネフランセ文化センター
土本典昭監督公式サイト »
田村正毅(撮影)×久保田幸雄(録音)
三里塚・辺田部落
1973/モノクロ/16mm/146分/監督:小川紳介
一連の小川プロ「三里塚」作品群の6番目。闘争の荒々しい白熱から一歩引き、農民の生活や心理に寄った傑作。「ちょっと落ち着いてというか…離れてじゃなくて客観的になれる。または彼らの中に溶け込んでいれるというか、そんな時間にいたんでしょうね」(田村)
10.3(火)12:30 @アテネフランセ文化センター
原一男(監督)
全身小説家
1994/カラー/35mm/157分/イメージ篇撮影:大津幸四郎
1992年に他界した作家・井上光晴の晩年に、『極私的エロス』や『ゆきゆきて、神軍』でアクションドキュメンタリーを打ち立てた原一男が対峙する。「僕らもドキュメンタリーをやっていて、虚構と現実の関係というのは抜きにできない問題ですが、生身の井上光晴という人が、どういう生きざまと作品で虚構と現実の関係を作り上げているのかを見せてもらおう」(原)
10.3(火)15:30+トーク(原一男)@アテネフランセ文化センター
制作会社疾走プロダクション »
是枝裕和(監督)×森達也(監督)
もう一つの教育~伊奈小学校春組の記録~
1991/カラー/ビデオ/47分/監督:是枝裕和
是枝裕和監督公式サイト »
1999年のよだかの星
1999/カラー/ビデオ/52分/監督:森達也
森達也監督公式サイト »
「子どもが過ごしている時間というものを追体験してみたい…っていうのが真面目な意見ですけど、本当はすごく好きな女の子が1人いて(笑)」(是枝) 「じゃあ自分でやろう、ルーティンから抜け出て、自分で好きなもの作ればいい。それからドキュメンタリーが面白くなった。」(森) 一頭の乳牛を飼育することで学習する小学生たちの記録。動物実験を通した<生の営み>の矛盾を提示。テレビで自由な才能を開花させた2人のフジテレビ「NONFIX」作品。
10.3(火)19:00+トーク(森達也)@アテネフランセ文化センター
羽田澄子(監督)×工藤充(製作)
早池峰の賦
1982/カラー/16mm/185分
「岩手県の山村を撮った時には、町がこの企画に協力してくれて、お金を集めることを一緒にやってくれたんです」(羽田) 岩手県の山奥、古くから霊山として知られ、山伏の修行場でもあった早池峰山。そこで舞われる神楽は人々を魅了してやまない。変わりゆく地域住民の生活の中でも、山と共にあり息づく伝統芸能の姿を捉える。
10.4(水)13:10+トーク(羽田澄子、工藤充(予定)) @アテネフランセ文化センター
製作・配給会社自由工房 »
河瀬直美(監督)
杣人物語
1997/カラー/16mm/73分
「過疎のその村の中で生きている高齢の彼らにとって、私の存在はたぶん1つの光のような感じでやってきたのかもしれないんですよね。私自身も彼らと過ごすその時がとても心地よかった」(河瀬) 劇映画第1作目の『萌の朱雀』で遭遇した大がかりな製作体制を後に、河瀬は8mmとビデオカメラをもって奈良県吉野の、山に生きる老人たちの懐に飛び込んだ。
10.4(水)17:10 @アテネフランセ文化センター

河瀬直美監督公式サイト »
大木裕之(監督)
g8-2(カリ)
2003-/カラー/ビデオ/83分
g8-23(カリ)
2005-/カラー/ビデオ/23分
ドキュメンタリー、実験映画、ピンク映画、ビデオ・アート他、旺盛な活動を続けている大木裕之が今年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で発表した新作。高知、東京、中国で、自らの存在を問い、虚構と現実の境界をさまよいながら、終わりのない旅を続ける大木監督の現在。併せて大木監督の最新作を本邦初上映。
10.4(水)19:00+トーク(大木裕之)@アテネフランセ文化センター
呉徳洙(オ・ドクス、監督)
戦後在日五〇年史 在日
1997/カラー/16mm/258分
「 “在日”って一体何なんだっていうね。国籍なのか血なのかルーツなのか、それら全部なのか。時が経つごとに見えにくくなっている」(呉) 解放から50年に及ぶ在日の歴史をまとめた、二部構成の壮大な作品。前半「歴史篇」は、膨大な映像資料、証言をもとに年代順に追う。後半「人物篇」では、一世、二世、三世、その生き方を活写する。

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10.5(木)13:30+トーク呉徳洙 @アテネフランセ文化センター
※途中休憩あり
土屋豊(監督)
新しい神様
1999/カラー/ビデオ/99分
「自分の存在っていうのは本当に重要なのか、という思いは、社会との接点の無さということの現われだと思うんですね。その社会と接点を持てないこのフヤフヤとしたこの退屈な、“終わりなき日常”の中で」(土屋) いまを生きる日本人の不安と高揚を娯楽たっぷりに捉えた青春ドキュメンタリーの金字塔。いまや人気作家雨宮処凛の主演作。
10.5(木)19:00+トーク(土屋豊) @アテネフランセ文化センター
「新しい神様」公式サイト »
亀井文夫(監督)×プロキノ(制作)×工藤充(製作)
信濃風土記より 小林一茶
1941/モノクロ/35mm/27分/監督:亀井文夫
山宣渡政労農葬
1929/モノクロ/35mm/6分/プロキノ作品
教室の子供たち
1954/モノクロ/35mm/29分/監督:羽仁進
19世紀の俳人小林一茶の俳句をモチーフに信濃の農民の自然と貧困の中の生活を描いた詩的ドキュメンタリー『小林一茶』。亀井監督最高作との呼び声も高い。併映は治安維持法に反対し暗殺された山本宣治の労農葬を収めた『山宣渡政労農葬』と「一番最初のヒット作ですね」(工藤)という当時の記録映画、教育映画の新しい地平を切り拓いた記念碑的作品『教室の子供たち』。
10.6(金)12:40+トーク(予定) @アテネフランセ文化センター
鈴木志郎康(監督)
草の影を刈る
1977/モノクロ/16mm/200分
約1年間、自分の日常生活の「プライベートな部分を撮影して」「そこにイメージを作り出していく」中で、NHKを退職する決意を固めさせた作品。「僕の映画を作る最初の出発点というのはアンチ・メディアなんです。…マスメディアを支配している価値観とは違うものとして自分のフィルムを提出しなければならない、と思っている」(鈴木)
10.6(金)14:40+トーク鈴木志郎康 @アテネフランセ文化センター
※途中休憩あり
鈴木志郎康監督公式サイト »
柳澤壽男(監督)×松村禎三(音楽)
ぼくのなかの夜と朝
1971/カラー/16mm/100分
「こいつらはどうしてこんなに元気がいいんだろう。それを知りたいなと思って撮り始めたんですよ」(柳澤) 「僕がこれまでで一番感動したドキュメンタリーですね」(松村) 身障者の人たちへのまなざしを自身に突き刺すよう先鋭化していった柳澤監督が描く、進行性筋萎縮症の子どもたちの生活の記録。日本を代表する音楽家松村禎三の旋律が胸を打つ。
10.6(金)19:00 @アテネフランセ文化センター
黒木和雄(監督)×久保田幸雄(録音)×松村禎三(音楽)
わが愛北海道
1962/カラー/35mm/47分/録音:久保田幸雄、音楽:松村禎三
東芝の電気車輌
1958/カラー/35mm/20分
今年急逝された黒木和雄のPR映画2本。「もう、ゴダールやレネとも出会っていますから、四季折々の観光地や工場の将来性を謳うっていうのはちょっとしんどくて、劇映画仕立てにしよう、ということにしたんですね」(黒木) 「自分で演出をやるより、こういう人たちと一緒に仕事をしたいということで、録音の仕事をやることに決めたんです」(久保田)と語る「青の会」の熱気に繋がる『わが愛北海道』。併映は『東芝の電気車輌』。
10.7(土)13:00 @アテネフランセ文化センター
松川八洲雄(監督)
不安な質問
1979/カラー/16mm/85分
熊野古道
2006/カラー/VHS/15分
「この映画は4度エンディングがあるんです。これでは終われないという結果、“結”が連続しました」(松川) 日本ドキュメンタリーの名作『不安な質問』。当初のタイトルが『ユートピア斗争宣言』というように、1970年代初頭、自分たちの農場を作り運営する都市生活者コミューン「たまごの会」のラディカルな道のりをエネルギッシュに描く。併映は松川監督最新作を特別先行上映。
10.7(土)14:40+トーク(松川八洲雄)@アテネフランセ文化センター
佐藤真(監督)×大津幸四郎(撮影)
エドワード・サイード OUT OF PLACE
2005/日本語、英語、アラビア語、ヘブライ語/カラー/35mm/137分
パレスティナ出身の思想家エドワード・サイードの遺志と記憶をたどりながら、中東の和解と共生を考える旅。「目に見えるボーダーは、今イスラエルが作っている分離壁とか、本当に目立ち過ぎるくらいにはっきり見えるんだけど、実際にサイードが、直接的に問題にしたのは目に見えないほうの壁だと思うんです。人々のなかに無数の目に見えない壁がある」(佐藤)

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10.7(土)17:10+トーク(佐藤真)@アテネフランセ文化センター
「OUT OF PLACE」公式サイト »

【ついに書籍化が決定!】

[書籍]ドキュメンタリー映画は語る
作家インタビューの軌跡
編:山形国際ドキュメンタリー映画祭「Documentary Box」編集部
発行:未來社
協力:シネマトリックス
山形国際ドキュメンタリー映画祭の機関誌として年に2回発行してきた「Documentary Box」。第1号から続けてきたシリーズ「日本のドキュメンタリー作家インタビュー」の14年間、26人すべてのインタビューが1冊の本になりました!
全国書店にて2006年10月5日頃より、アテネ・フランセ文化センターでは9月30日より発売開始!

未來社刊◎販売価格:5,040円(税込)

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主催◎シネマトリックス
共催◎山形国際ドキュメンタリー映画祭実行委員会、アテネ・フランセ文化センター、映画美学校、ポレポレ東中野
協力◎東京国立近代美術館フィルムセンター、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)、東北芸術工科大学東北文化研究センター

フィルム提供:
アテネ・フランセ文化センター、アリイケシンジゲート+大きい木、岩波映像、映画「戦後在日五○年史」製作委員会、川口肇、共同映画社、シグロ、疾走プロダクション、自由工房、白石洋子、鈴木志郎康、瀬戸口未来、高嶺剛、W-TV OFFICE、陳凱欣、朝鮮総聯映画製作所、全州国際映画祭、テレビマンユニオン、直井里予、日本映画新社、朴壽南、ビデオアートセンター東京、プラネット映画資料図書館、北星、松川八洲雄、松本俊夫、もう一度福祉を考え直す会・磯田充子、ヤェール・パリッシュ、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー