10. 3(金)

プノンペンのアパートに娼婦として暮らす女性たち。田舎やキャンプから出てきた彼女たちは、マダムや客の暴力、病、借金や負い目などから戻ることができない。『さすらう者たちの地』『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』、『アンコールの人々』など、カンボジアの記憶を取り戻すため作り続ける監督が彼女たちの語らい、つぶやきを写し取る渾身作。

パキスタン戦争の前線に送られたきり、安否不明とされる大勢のインド軍兵士たち。新婚の思い出を語る妻、老いていく母、父親を知らずに育った子どもたちが30年間も帰りを待ち続ける。国の外交「事情」と無策が普通の幸せを奪う非道に、声を上げる。
■シュプリオ・シェーン監督インタビュー

ヴィー老人が僧院にするため50年前に購入した城を、82歳になったいまようやく教会・修道院としてロシア正教が相続することが正式に決まる。準備のためデンマークにやってきた若いロシア人尼僧と価値観の違いなどで衝突を繰り返しながらも、共同で教会作りに取り組み続ける自称恋愛経験なしのヴィー老人の姿を魅力たっぷり描く。

女性服の装飾に使われる金錦を作る老職人。戦争で肉親を失い、材料も入手不可能となった時、戦争の残骸をも優雅に編み込んでいく『ゴールデン・ダンス』。川が孤立させるネパールの辺境に住む人々が和気あいあいと取り組む橋作り。貧しくも人生に奔放な住民たちが橋完成の瞬間に幻想のようなひとときの平穏を送り出す『我ら辺境に生きる』。
■『ゴールデン・ダンス』スタッフインタビュー
■『我ら辺境に生きる』監督インタビュー

ある老女の古ぼけたアパート。ソファで差し向かい、ただただ話を聞く......。1950年来、幾たびもの粛清運動で迫害を受けた彼女の壮絶な物語が、ほとんど編集をはさまない固定カメラの映像と音声を通して圧倒的な波動で押し寄せてくる。記者だった夫との情愛と別れがまるで目の前で繰り広げられるよう。
■王兵監督インタビュー