01●引き裂かれる魂たち

ある老女の古ぼけたアパート。ソファで差し向かい、ただただ話を聞く......。1950年来、幾たびもの粛清運動で迫害を受けた彼女の壮絶な物語が、ほとんど編集をはさまない固定カメラの映像と音声を通して圧倒的な波動で押し寄せてくる。記者だった夫との情愛と別れがまるで目の前で繰り広げられるよう。
■王兵監督インタビュー

1976年。軍事政権下のアルゼンチンで、ふたりの幼い息子をもつ平凡な女性が突如消息不明となった。マルタはどこに消えたのか。母不在のまま大人となった長男ニコラスが、映画というメスを借り、汚い過去を封印しようとする国家と当時を知る人々の記憶に揺さぶりをかける。
■ニコラス・プリビデラ監督インタビュー

『M』のマルタと同年、軍事政権に拉致殺害された映像作家レイムンド・グレイザーの伝記。映画を中南米の解放運動の武器とみなした彼も、ホームムービーには愛らしい息子が。その姿と声から『M』監督のニコラスを思わずにはいられない。この機会に併せてご覧ください。
■エルネスト・アルディト監督、ヴィルナ・モリナ 監督インタビュー

祖国シリアから遠く離れたフランスで長年亡命生活をおくるハーラとすっかり白髪となった画家の夫。荒れくれた海、孤島に取り残された少年、修復されるイコン、初老を迎える女友だちの涙。"流刑者"の喪失、諦念、そして希望を政治ではなく詩と風景から描く、幻想的な心のさけび。
■ハーラ・アルアブドッラー監督、アンマール・アルベイク監督インタビュー

2002年4月、ヨルダン川西岸地区のジェニン難民キャンプでイスラエル軍は無差別な虐殺を繰り広げ、さらにその事実を隠蔽しようとした。死傷者数百人の多くが子どもや高齢者を含む非戦闘員だった。俳優のバクリは、生き残った人々の生々しい証言と瓦礫の町並みをカメラに収め、イスラエル人に真実を知ってほしいと思った......。

イスラエル籍のパレスティナ人俳優として名高いバクリ。真心から作ったドキュメンタリー『ジェニン ジェニン』がイスラエルで上映禁止となり、ふたりの甥はテロ幇助容疑で逮捕されてしまう。民族共存と平和を願う者の前に立ちはだかる闘いのパーソナルな記録。
■ムハンマド・バクリ監督インタビュー

テルアヴィヴの一角ガーデンには、あらゆる人たちが道にあふれ、街灯がまぶしい猥雑な町。イスラエルという表社会では窒息してしまうティーン・エイジャーの親友、ニノとドゥドゥにとってはここが住居だ。日々をやりすごすにも厳しい路上生活を送りながら、彼らのその目の先には、"何か"が広がっている。
■ルーシー・シャツ監督インタビュー

パキスタン戦争の前線に送られたきり、安否不明とされる大勢のインド軍兵士たち。新婚の思い出を語る妻、老いていく母、父親を知らずに育った子どもたちが30年間も帰りを待ち続ける。国の外交「事情」と無策が普通の幸せを奪う非道に、声を上げる。
■シュプリオ・シェーン監督インタビュー