シノプシス/Synopsis

1997年、映画監督ペドロ・コスタは、ある家族の運命を描いた劇映画「骨」をつくる。その後、再び、彼は撮影地のリスボンにあるスラム街フォンタイーニャス地区に戻り、続編とも言うべきこの作品を手掛けた。「骨」の主役でもあった女性、ヴァンダ・ドゥアルテの日常を、デジタルカメラで、また少人数のスタッフで2年間、追った。

リスボンの市中にある取り壊されつつある街、フォンタイーニャス。アフリカからの移民が多く暮らす街。街中にブルドーザーやショベルカーの工事の音が響き渡っている。その中の、わずか3メートル四方の小さな部屋。ここに住むのは、ヴァンダ・ドゥアルテ。その近所に暮らす、ヴァンダの妹、ジタと母。近くに住み、引っ越そうとしているパンゴという黒人の青年。ヴァンダたちは、何をするでもなく、麻薬を吸引することにいそしんでいる。その影響なのか、ときおり激しく咳こむ。



どうやら、ヴァンダの仕事は、野菜を売って歩くことのようだ。しかし、本当に商売をする気があるのか、わからない。あいかわらず、街のあちこちでは、工事が続いている。街が消えつつある。彼らは、何を目的に、何をしたいのか? しかし、そこに確かに存在する、人々の関わり、コミュニティ。妹や母とのいつものような喧嘩。

「いたいだけいていいよ」とヴァンダは、パンゴに言う・・・。私たちは、ベッドひとつしかない殺風景な“ヴァンダの部屋”と次第に破壊され、消えていく“この場所”を見つめ続ける。そこで見えてくるのは「人間が、ただ、そこにいる」ということ。そして、それこそが『ヴァンダの部屋』が語りかける「奇跡」である。


 




[提供・配給]シネマトリックス、シネヌーヴォ
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